1.そもそも生理不順とは
「生理不順」を正しく理解していますか。 ちょっとしたきっかけで遅れることがある生理ですが、「生理不順」と呼ばれるのは、どの程度のずれからなのでしょうか。 まずは、生理不順の定義について簡単に説明します。
正常な生理と生理不順
生理不順かどうかを判断するのにかかせないのが、生理周期です。 生理周期は、「前の生理が始まった日から、次の生理が始まる前日までの日数」で表します。 ポイントは、生理が終わった日ではなく始まった日から数えるという点です。
この生理周期が25~38日の間に入っていれば、問題ないとされています。 つまり、生理周期は正常であるといえます。
しかし、生理周期が24日以下だったり39日以上の場合は、生理不順と呼ばれます。
正常な生理
生理周期が25~38日
正常ではない生理(生理不順)
生理周期が24日以下、または39日以上
2.生理不順にも種類がある
ひと口に「生理不順」と言っても、生理不順にはいくつかの種類があります。
頻発月経
生理周期が24日以下の場合
稀発月経
生理周期が39日以上の場合
過長月経
生理期間が8日以上続く場合
過短月経
生理期間が2日以内で終わる場合
2. 生理不順と関係する、体の不調や病気
生理不順の根本的な原因は女性ホルモンの乱れにあり、疲労やストレスなどが原因になるケースが多いのですが、病気が原因になっていることもあるのです。 続いては、生理不順と関係する、体の不調や病気について見ていきましょう。
3.卵巣機能不全の疑い
卵巣機能不全とは卵巣の機能が低下して、 女性ホルモンのバランスが乱れ、卵胞の成長が悪くなったり、排卵が遅れたりして、生理不順を起こすこともある病気です。
原因
主な原因は、年齢によるものだといわれています。 卵巣機能の低下は33歳を過ぎたごろから始まり、35歳以降では急激に低下していきます。
また、過度のダイエットやストレスによる栄養バランスの乱れや、生活習慣の乱れなどが卵巣機能低下の原因となることもあります。
症状
過長月経や稀発月経が、特徴的な症状です。 ほかにも、ホルモンバランスの乱れより、更年期障害のようなめまいや頭痛などの症状があらわれることがあります。
卵巣機能不全かなと思ったら
生理周期が乱れても、排卵があり生理がくるようなら、特に治療の必要はありません。 規則正しい生活を心がけるなど、セルフケアを行い、生理周期が安定するように努力しましょう。
また、卵巣機能不全は下記で紹介している「無月経」や「無排卵月経」につながる可能性があり、 これらの病気になった場合には、妊娠を希望するさいは治療が必要となります。
自己判断は危険なため、少しでも不安がある場合は婦人科に行くようにしてください。
4.無月経
無月経とは、以前は継続して来ていた生理が、妊娠していないのに3カ月以上が来なくなる状態をさします。
原因
原因の多くは、ストレスや不規則な生活などによりホルモンバランスが崩れることです。 また、下記で説明する「多嚢胞性卵巣症候群」などの病気によるものとも考えられます。
症状
無月経は、3カ月以上生理が来ないことです。 また、生理が来ないこと以外に症状がないことも特徴のひとつです。
無月経かなと思ったら
3カ月以上生理が来ない場合は、早めに婦人科に行き治療を受けましょう。 放っておく期間が長くなるほど卵巣機能が低下し、不妊につながることがあります。
5.無排卵月経
無排卵月経とは、生理はあるけれども、排卵がないことをさします。
原因
「無月経」と同じように、主な原因は、ストレスや不規則な生活などによりホルモンバランスが崩れることです。 また、下記で説明する「多嚢胞性卵巣症候群」などの病気によるものとも考えられます。
症状
生理が月に2回来る(頻発月経)、稀発月経、過少月経、生理痛があまりない、などの症状が特徴的です。 また、排卵が起こると卵巣から黄体ホルモンが分泌されて体温が上がりますが、無排卵月経では低温期がずっと続きます。
無排卵月経は、排卵がされてなくても生理が来るため、見極めることが難しいです。 日頃から、基礎体温を自分で測り、排卵が起きているかどうかを確認することが有効です。
無排卵月経かなと思ったら
排卵検査薬を使えば、排卵が行われているかを確認することができます。 しかし、無排卵でも陽性反応が出てしまうことがあり、確実とは言えないようです。 そのため、無排卵月経の疑いがあるのならば、きちんと婦人科を受診することをおすすめします。
6.子宮筋腫
子宮筋腫とは、子宮内に良性のこぶができることです。 良性なので命にかかわる心配はありませんが、10cm以上の大きなものになることもあります。
成人女性の5人に1人は子宮筋腫があるといわれています。
原因
原因はよく分かっていませんが、思春期前の女子には発症することがほとんどないため、 女性ホルモンが関係しているのではないかといわれています。
症状
特徴的な症状は、過多月経や過長月経です。たとえば、「長時間用のナプキンをしていても、1時間ほどしかもたない」 「ナプキンとタンポンを使用していても漏れてしまう」「月経が10日間以上続く」「レバー状の血の塊が混じっている」などです。
ほかにも、貧血、腰痛、頻尿などの症状があらわれることがあります。
ただし、自覚症状がないことも珍しくないため、がん検診で偶然筋腫が見つかることも多くあります。
子宮筋腫かなと思ったら
自覚症状が少ない病気ですが、気になる症状や不安に思うことがあるなら、婦人科で検査を受けるようにしてください。 検査の結果、子宮筋腫が見つかっても、筋腫が小さくて症状がなければ治療をせずに経過観察になる場合もあります。
7.子宮内膜症
子宮内膜症とは
子宮内膜症とは、本来、子宮の内側にあるはずの子宮内膜とよく似た細胞組織が、子宮外(膣、卵巣、膀胱など)できてしまう病気です。 通常、子宮内膜は、一定の周期ではがれ落ちて血液とともに体外に排出されます(月経のことです)。
しかし、子宮外にできた子宮内膜は、はがれ落ちても体外に排出できず体内に溜まってしまい、体にさまざまな悪影響を与えてしまうのです。
原因
まだはっきりとした原因は分かっていません。
症状
子宮内膜症の特徴的な症状は重い生理痛で、子宮内膜症の9割近くの人が訴えます。 また、生理不順も引き起こします。
ほかには、下腹部痛、腰痛、性交痛、吐き気、嘔吐といった症状もあらわれることがあります。
「生理痛がここ最近急にひどくなってきて、鎮痛剤を飲んでも効き目がなく、生理中は寝込んでしまう」といった状況に心当たりがある人は要注意です。
子宮内膜症かなと思ったら
上記の症状で思いあたることがある場合は、すぐに婦人科を受診することが大切です。 放置しておくと不妊につながる可能性もあります。
8.子宮頚がん
子宮頚がんとは
子宮頸がんとは、子宮の入り口である子宮頸部にできるがんで、20~30代の若い女性に多く発生しています。
原因
子宮頸がんの発症には、ヒトパピローマウイルス(HPV)と呼ばれるウイルスが深くかかわっています。 このウイルスはごくありふれたウイルスで、性行為によって簡単に感染します。 そのため、セックス経験がある女性なら誰でも、ウイルスに感染するリスクがあるといえます。
ウイルスに感染しても、すべてが子宮頸がんに進展するわけではありませんが、リスクはあるため、定期的に検診を受けることは大切です。
症状
子宮頸がんは、初期にはまったく自覚症状はありません。 がんが進行すると、以下のような症状があらわれます。
- 過多月経
- 過長月経
- 不正出血
- 腰痛
- 下腹部痛
- 性行為時の出血
子宮頸がんかなと思ったら
上でも書きましたが、子宮頸がんは初期症状がないため、上記のような症状があらわれた場合は、がんが進行している可能性があります。 そのため、気になる症状がある場合は、少しでも早く婦人科を受診してください。
また、子宮頸がんの早期発見には検診を受けることが何よりも大切です。 自治体による無料検診も行われているため、ぜひ受けるようにしてください。
9.多嚢胞性卵巣症候群
多嚢胞性卵巣症候群とは、卵巣機能に何かしらの異常起こり、本来排卵されるはずの卵子が卵巣内にたまっていく病気です。 そのため、卵巣の壁に排卵されていない卵子が癒着し、壁を分厚くしてしまいます。 排卵が行われないため、妊娠できず不妊症へとつながる危険性もあります。
原因
病気を引き起こす原因は、はっきりとはわかっていません。
症状
排卵がおこりにくいことによる月経不順や無月経、 さらには肥満、毛深くなる、声が低くなるなどの変化があらわれることもあります。
多嚢胞性症候群かなと思ったら
上記でも説明したように、この病気は放置しておくと直接的に不妊につながってしまいます。
基礎体温を測って排卵がないかなと思ったり、生理周期が長くなってきたかなと感じたら、 はやめに婦人科を受診して、きちんと治療しましょう。
10.最後に
これまで紹介した病気以外にも、子宮体がん、クラミジア頸管炎や子宮頸管ポリープなど、生理不順に関係する病気はたくさんあります。 生理は、女性の体調を反映するといわれています。
そのため、生理がいつもと違ったり不安な症状がみられる場合は、体のどこかが不調である可能性があります。 生理不順は、生理周期が乱れているということなので、一番気づきやすい生理の不調といえます。
そんな生理不順を放置せずに、きちんとはやめに婦人科を受診して治していきましょう。 早期発見と早期治療を心がけましょう。