1.HIVの治療費は?

HIV治療が進化した現在では、たとえHIVに感染しても治療によってエイズ発症を抑えることができ、HIV感染前と同じような生活を送ることも可能になってきました。

ただしそのためには、抗HIV薬を使った治療を、一生受け続ける必要があります。

治療によってエイズ発症を防げるのは非常に素晴らしいことですが、 その一方で、「治療費が気になる」ということも現実問題としてあると思います。

月額約20万円

優れた治療効果が期待できる抗HIV薬は、決して安いお薬ではありません。 1カ月あたり全額を自分で払う場合には、約20万円かかります。

健康保険を使えば3割負担になりますが、それでも毎月約6万円、年間では72万円もかかります。

これだけの治療費を一生払い続けるのは、多くの人にとって簡単なことではありません。 そのため日本には、HIV感染者の医療費負担を軽減するさまざまな制度があるのです。

2.医療費負担を軽減する制度

HIV感染者が使える医療費負担を軽減する制度には、 「身体障害者手帳」「自立支援医療(更生医療)」「重度障害者医療費助成制度(障害者医療)」「高額療養費制度」などがあります。 それぞれについて見てきましょう。

身体障害者手帳

HIV感染者は、「身体障害者手帳」を申請することができます。 身体障害者手帳とは、「身体障害者が、健常者と同じような生活を送るために最低限必要な援助を受けるための手帳」です。

HIV感染と身体障害が結びつかない人もいるかもしれませんが、「免疫機能障害」に該当します。

身体障害者手帳は、障害の程度によって等級が分かれていますが、HIV感染者の場合、1~4のいづれかの等級で取得できます。

1級(最も重い)

免疫機能の障害で、日常生活がほとんど不可能

2級

免疫の機能の障害で、日常生活が極度に制限される

3級

免疫の機能の障害で、日常生活が著しく制限される

4級

免疫の機能の障害で、社会での生活活動が著しく制限される

身体障害者手帳を取得すると、これから説明する「自立支援医療(更生医療)」や「重度障害者医療費助成制度(障害者医療)」を利用することができます。

自立支援医療(更生医療)

自立支援医療(更生医療)は、身体障害者手帳を持っている18歳以上の方が利用できる制度です。

HIV感染に関連する治療(抗HIV療法、免疫調節療法、日和見感染症の予防)の医療費が、原則として1割負担となります。

また、月額の医療費負担上限額も世帯収入によって決められています。 上限を超えた金額は払う必要がなく、 制度対象者が生活保護を受けている世帯では上限0円(つまり無料)、世帯年収が80万円以下では上限2,500円、それ以上の世帯でも上限2万円です。

このように自立支援医療(更生医療)では、1割負担、かつ、月額の上限が決められているため、 健康保険に比べて大きく負担を減らすことができます。

重度障害者医療費助成制度(障害者医療)

重度障害者医療費助成制度(障害者医療)は、身体障害者手帳を1~3級(自治体によっては1~2級)で取得すると利用できる制度です(利用するには所得制限もあります)。

HIV感染に限らず、あらゆる病気の治療を無料、またはかなりの低額で受けることができます(自治体によっては500円程度の負担があります)。 ただし、入院の場合の食費は自己負担が生じます。

高額療養費制度

高額療養費制度は、身体障害者手帳を取得していなくても使える制度です。

1カ月間(月の初日~末日まで)の医療費が一定の金額を超えると、 医療機関の窓口でいったん支払いをした後、上限額を超えた部分の金額が戻ってきます。

3.お金が支給される制度

HIV感染者は、医療費負担の軽減以外にも、経済的なサポートを受けることができます。

傷病手当金

傷病手当とは、病気やケガによって仕事を休まなければならなくなった際、健康保険組合から標準報酬日額の3分の2相当の金額が支払われる制度です。

初回の申請日から1年半の間に、休んだ分だけ支給されます。1年半を過ぎると、支給されません。 また、下記の障害年金を受給している場合は、金額が調整されます。

障害年金

障害年金とは、障害が理由で働けない、労働に制限があるなど、生活が長期にわたり困難な状態にある場合、生活費を保障する制度です。

初診日の時点で加入している年金の種類(国民年金や厚生年金など)によって、支給される障害年金の種類が異なります。

4.制度を使うと会社にばれる?

上であげた制度を利用するには、医療機関や自治体などに申請する必要があります。 そのため、「会社や周りの人にHIV感染を知られてしまうのでは…」と不安に思う人もいます。 実際のところどうなのでしょう。

守秘義務があるためばれない

申請の際に扱う情報は、重要な個人情報に当たります。 当然、申請先の医療機関や自治体には、厳重な守秘義務が課せられています。 申請することで、会社にばれることはありません。

ただし、障害者控除は申告が必要

身体障害者手帳を取得して「障害者控除(一定金額の所得控除を受けられる制度)」を利用する場合は、源泉徴収の際に会社に申告する必要があります。

そのため、HIV感染や身体障害者手帳の所持を知られたくないために、障害者控除を利用しない人もいます。

5.最後に

HIV感染の治療費は高額ですが、負担額を軽減できるさまざまな制度があります。 「どのような制度を利用できるのか」「申請はどこで行えばよいのか」など、自分ひとりで理解して行動するのは大変です。

実際に活用する際には、医師や看護師、医療ソーシャルワーカーなどに相談することをおすすめします。

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