1.HIV・エイズについて

HIVとエイズの違い

HIVは「怖い病気」というイメージが先行して、正しい情報が伝わっていない病気でもあります。 HIVとエイズを、混同して理解している人も多いようです。

HIVとは、ヒト免疫不全ウイルスのことで、要するにウイルスの名前です。 一方、エイズとは、HIVに感染して数年~10数年後に発症する病気のことです。

詳しくはあとで解説するので、まずは下記の3点を理解してください。

  • HIVはウイルスの名前
  • エイズはHIVによって発症する病気
  • HIV感染とエイズ発症は違う

日本でのHIV/エイズの状況

HIVやエイズは「アフリカで多い」というイメージがありますが、 日本でも毎年多くの人がHIVに感染したり、エイズを発症したりしています。

厚生労働省によると、日本では2015年に、HIV感染者数が1,006人、エイズ発症数(エイズ患者数)が428人、新たに報告されました。

HIV感染は特に若い世代で多く、20代と30代での合計が645人と、全体の64.1%を占めています。 また、関東(とくに東京)や大阪といった都市部に集中している傾向も見られます。

2.感染原因について

感染原因は3つある

続いては、HIVに感染する原因を見ていきましょう。

HIVは感染者の精液、膣分泌液、血液、母乳に多く含まれていて、HIVを含んだ精液などが、粘膜や傷口に触れると感染します。

主な感染原因には、「性行為による感染」「母子感染」「血液感染」の3つがあります。

1.性行為による感染

HIVの感染原因で最も多いのが、性行為による感染です。

2015年の報告では、新規HIV感染者1,006人のうち、異性との性行為による感染が196人、同性との性行為による感染が691人で、 性行為による感染は合わせて887人、HIV感染全体の88.2%を占めています。

原因となる性行為も幅広く、セックス、オーラルセックス、アナルセックスで感染します。 それでは、行為別に詳しく見ていきましょう。

セックス(性器の挿入)での感染

HIVを含む精液が腟に感染するケース(男性から女性)と、HIVを含む腟分泌液がペニスに感染するケース(女性から男性)があります。

フェラチオでの感染

HIVを含む精液を口の中に射精されたり、飲んだりすると、口の粘膜から感染するケースがあります。 口の中に傷(口内炎や歯磨きによる傷)があると、傷口から感染しやすくなるため、リスクはさらに高まります。

クンニリングスでの感染

HIVを含む腟分泌液が、相手の口や舌の粘膜に感染するケースがあります。

アナルセックスでの感染

HIVを含む精液をアナルに射精されると、直腸に感染するケースがあります。 アナルは傷つきやすく出血しやすいため、アナルセックスは性行為の中でも特にリスクが高い行為です。

実際に、男性同士の性行為(アナルセックス)による感染が、最も多く報告されています。

性感染症に感染しているとリスクが高まる

1回の性行為によるHIV感染リスクは、0.1~1%程度と言われていますが、クラミジアや梅毒などの性感染症にかかっていると、感染リスクが高まります。

理由は、性感染症によって性器の粘膜がダメージを受けると、そこからHIVが感染しやすくなってしまうからです。

ヘルペスや梅毒などで性器に潰瘍(粘膜の傷)ができていると、男性では10~50倍、女性では50~300倍もHIVの感染リスクが高まります。 また、クラミジアや淋病など潰瘍がない場合でも、男女ともに2~5倍ほど感染しやすくなります。

2.母子感染

ふたつ目の感染原因は、「母子感染」です。 妊婦さんがHIVに感染していると、妊娠や出産、母乳を通して、赤ちゃんに感染することがあります。

ただし、現在では妊婦健診などでHIV感染を確認し、赤ちゃんへの感染を防ぐ対策を事前に取れるため、母子感染例は激減しています(1%未満)。

3.血液による感染

感染原因の最後は、「血液による感染」です。 麻薬や覚せい剤で使う注射針をHIV感染者と共有すると、針についた血液を介してHIVに感染するリスクがあります。

注射器の回し打ちはもちろん、麻薬や覚せい剤は絶対に使ってはいけません。

また、HIV感染者とカミソリ、歯ブラシ、ピアスなどを共有すると、付着した血液から感染する可能性もあります。

唾液(キスやディープキス)からは感染しない

性行為での感染リスクがあるHIVですが、キスやディープキスの唾液から、HIVに感染することはありません。

唾液の中にも、HIVは含まれています。 しかし、ウイルス量が極めて少ないため、感染するにはHIV感染者の唾液を一度にバケツ4~5杯分飲む必要があるため、現実的に考えてありえません。

ただし、HIV感染者が口の中から出血していて、相手も口の中に傷がある場合には、 ディープキスを通して血液によって感染するリスクがあります。

日常生活からも感染しない

HIVは感染力が非常に弱く、人の体の中でしか生きられない特徴があるため、下記のようなケースでは感染しません。

  • せき・くしゃみ
  • つり革
  • 涙・汗・尿・便
  • 握手
  • 同じ鍋をつつく
  • コップやペットボトルの回し飲み
  • トイレ
  • お風呂やプール

誤解している人も多いようですが、身近にHIV感染者がいても、これらの行為に不安を持つ必要はないのです。

3.HIVの症状について

続いて、HIVに感染するとあらわれる症状を見ていきましょう。 HIVに感染すると、「感染初期」「無症候期」「エイズ発症期」という順番で、症状が進行していきます。

1.HIV感染初期

性行為などでHIVに感染すると、体内では急激にHIVが増殖して、感染4週目あたりでHIVの量がピークになります。 その結果、感染者の40~90%で、HIV感染後2~4週間後に下記のような症状があらわれます。

  • 発熱
  • 全身倦怠感
  • 皮疹
  • 筋肉痛
  • リンパ節の腫れ
  • 咽頭炎(のどの炎症)

HIV感染初期には、このようなインフルエンザとよく似た症状があらわれます。 しかし、これらの症状は数週間で自然になくなってしまうため、この段階でHIV感染に気づくケースはほとんどありません。

その後はHIVの増殖がいったん落ち着き、無症候期に入ります。

2.無症候期

無症候期とは、HIVに感染しているのに自覚症状がない時期のことです。

治療を受けないでいると、無症候期でもHIVは少しずつ増殖し続けるため、免疫力は徐々に低下していき、やがて「エイズ発症期」を迎えます。 この期間は、個人差はありますが5~10年ほど続きます。

3.エイズ発症期

無症候期に免疫力が低下し続けると、やがて健康な人では問題のない細菌、ウイルス、カビなどによって、 「1カ月以上続く38.5度以上の発熱」「下痢」「ひどい寝汗」「急激な体重減少」などが見られるようになります。

そして、厚生労働省が定めた23種の「エイズ指標疾患」のいずれかを発症すると、 「エイズ発症」と診断されます。

エイズ指標疾患には、カンジダ症やカポジ肉腫などの病気がありますが、最も多いのがニューモシスチス肺炎という病気です。 エイズを発症した患者さんの約半数が、発症していると言われています。

ニューモシスチス肺炎
症状は、乾いたから咳、発熱、息切れ、倦怠感などで、一般的な風邪と変わりありません。ゆっくりと進行するために早期に気づくことが難しく、重症化するケースが多く報告されています。

また、エイズ指標疾患は、ひとつだけでなく複数合併することもあり、無治療で過ごすとこれらの病気によってエイズ発症後、約2年で死に至ると言われています。

エイズを発症させないために

上記のような理由から、エイズは「死の病」として恐れられていましたが、現在は治療法が進化しています。 たとえHIVに感染しても、早期から治療を受ければ、エイズの発症を抑えることが可能です。

そのためには、「HIV感染の不安があれば検査を受ける」ということが、何よりも大切なのです。

4.HIV検査について

スクリーニング検査と確認検査

HIVの検査には、「スクリ―リング検査」と「確認検査」があります。

まず最初に行われる検査が、スクリーニング検査です。 スクリーニング検査では、血液を採取して血液内にHIVに対する「抗体」があるかどうかを確認します。

抗体とは、体内に細菌やウイルスなどが侵入した際に、それに抵抗するために作られる物質のことです。 HIVに感染すると、体内ではHIVに対する抗体が作れます。 そのため、血液中に抗体があれば、HIVに感染している可能性があると考えるわけです。

スクリーニング検査で「陰性」と出ればHIV感染の疑いはなくなりますが、それ以外の場合には、さらに詳しく調べて感染の有無を確定する「確認検査」を行います。

確認検査で陽性になると、HIVに感染していると診断されます。 一方、スクリーニング検査で陽性と出ても、確認検査で陰性となった場合は、HIVには感染していないと診断されます。

即日に結果が分かる検査もある

HIV検査でまず最初に行うスクリーニング検査には、受けたその日のうちに結果わかる「即日検査」というものがあります。 「通常検査」では、結果がわかるまで1~2週間かかりますが、即日検査では採血してから約15分で結果がわかります。

結果がすぐに分かる反面、通常検査よりも偽陽性(感染していないのに陽性と診断される)が出る確率が高いと言われています。 偽陽性が出る割合は、通常検査で約0.3%、即日検査で約1%です。

このようなデメリットもありますが、即日検査は利用者の利便性が高いため、採用する検査機関が増えています。

HIVの即日検査について |メディカルノート

検査はウインドウ期を過ぎてから受ける

検査を受ける場合には、「受ける時期」にも注意が必要です。 スクリーニング検査で確認する抗体は、HIVに感染してから6~8週間後に作られます。 そのため、抗体ができる前に検査を受けると、HIVに感染していても結果は「陰性」になってしまいます。

感染してから抗体ができるまでの期間を、ウインドウ期と言います。 確実な結果を得るためにも、HIV検査は感染の疑いがある日から3カ月以上過ぎてから(ウインドウ期を過ぎてから)、受けるようにしてください。

ただし、感染して4週間後ぐらいで陽性反応が出るケースもあるため、感染の疑いが強かったり、不安が大きい場合には、3カ月よりも前に検査を受けてみてもいいかもしれません。 この時期に検査を受けて「陰性」と出た場合は、3カ月以降に改めて検査を受けるようにしてください。

5.検査を受ける場所

HIV検査は、保健所、病院、検査キットで受けることができます。

保健所

全国のほとんどの保健所で、HIV検査を無料・匿名で受けることが可能です。

「市内の保健所では知り合いにあうかもしれない…」という場合は、居住地以外の保健所でも受けられます。

保健所でのHIV検査は毎日行われているわけではないので、事前にHPなどで確認してください。予約が必要な場合もあります。

施設によって検査方法(通常検査、即日検査)が異なるため、事前に確認するようにしてください。

HIV検査相談マップ 全国HIV/エイズ検査・相談窓口情報サイト

病院

婦人科や泌尿器科、性病科などでもHIV検査を受けることができます。 また、全国のエイズ拠点病院でも検査を受けることができます。

エイズ治療・研究開発センター HIV/エイズ診療拠点病院一覧

費用は、保険が適応されない自費診療の場合、5,000円~10,000円くらいかかります。

施設によって検査方法(通常検査、即日検査)が異なるため、事前に確認するようにしてください。

検査キット

病院や保健所に行かずに、検査キットをネットで購入して受ける方法もあります。

料金はHIV検査単体で約5,000円程度。 クラミジアや梅毒など、複数の性感染症検査を同時に受けることも可能です。

検査キットを注文すれば、翌日にはキットが届き、専用の器具で指先から血液を採取して返送すれば、1週間後ぐらいには結果を確認することができます。

検査の精度を心配する人もいるかもしれませんが、検査は病院や保健所での検査と同様に、専門の検査機関である「登録衛生検査所」という場所で行います。登録衛生検査所とは、衛生面や安全面での厳しい条件をクリアしている検査機関のことです。安心してください。

HIVの検査キットについて |メディカルノート

また、こちらの記事で、検査キットの体験談を紹介しているので参考にしてください。

6.治療について

検査の結果、HIVに感染していたら治療を行います。

現在の医療ではHIVを完全に排除することはできないため、「HIVの増殖を抑えること」を治療の目標にして、抗HIV療法(多剤併用療法)を行うことが一般的です。

抗HIV療法(多剤併用療法)

現在日本では、20種類以上の抗HIV薬(HIVの増殖を抑えるお薬)があります。 その中から、3種類以上の抗HIV薬を組み合わせて使用します。

2種類では十分なHIV抑制効果が得られませんが、3種類では長期的な抑制効果が認められています。

7.感染後の生活

これまで通りの生活も可能に

1990年代後半から、HIV治療は大きく変わってきました。 次々と新しい抗HIV薬が開発されて、HIVの増殖を抑える効果が高まり、免疫力の回復も期待できるようになりました。

その結果、免疫力低下による病気の発症も少なくなり、エイズによる死亡率は明らかに低下しました。

さらに、お薬の副作用も少なくなり、1日の服薬量や回数も減り、治療を続けながら、これまで通りの生活を送ることも十分可能になってきたのです。

HIVに感染すると、日常生活ががらっと変わってしまうイメージを持っている人も多いと思います。 しかし、それは過去のイメージです。

治療法が進化した現在では、HIVは「死の病」から「上手に付き合っていける病気」に変わったのです。

8.最後に

HIVやエイズは怖い病気ですが、きちんと向き合える病気であることが分かりましたか。 治療法は格段に進化しています。その恩恵を受けるには、HIV感染の早期発見・早期治療がポイントです。 感染の不安があったり、これまで一度もHIV検査を受けたことがない人は、ぜひ検査を受けるようにしてください。

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