1.性器ヘルペスは単純ヘルペスウイルスが引き起こす

ある日突然、性器にピリピリとした痛みを感じたり、水ぶくれのようなものができていたら不安になりますよね。 これは、典型的な性器ヘルペスの症状です。

性器ヘルペスとは、単純ヘルペスウイルスというウイルスが引き起こすいわゆる性感染症のことです。 原因となる単純ヘルペスウイルスには、「1型」と「2型」があり、それぞれ次のような特徴があります。

単純ヘルペスウイルス1型の特徴

感染すると主に、口唇や顔面などの上半身に症状があらわれます。

単純ヘルペスウイルス2型の特徴

感染すると主に、性器や太もも、お尻などの下半身に症状があらわれます。

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症状がでる場所によって病名が変わる

そして、ヘルペスの症状があらわれる場所に応じて、 「口唇ヘルペス」「顔面ヘルペス」「歯肉ヘルペス」「上肢ヘルペス」「性器ヘルペス」というように病名が区別されます。

この記事では、性器や性器周辺に症状があらわれる「性器ヘルペス」について解説します。 口唇ヘルペスについては、こちらの記事をご覧ください。

2.ヘルペスに感染するきっかけ

まずは、単純ヘルペスウイルスが性器に感染してしまう原因を見ていきましょう。 ウイルスは症状がある人の患部(皮膚や粘膜)で大量増殖しているため、次のような行為で感染します。

症状がある人と「性行為をする」

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性器ヘルペスの主な感染原因は、「性行為」です。 相手の性器の粘膜にウイルスがいる場合は、粘膜同士の接触で簡単に感染します。

そのため、性器ヘルペスを発症している人と性行為をすると、高い確率でウイルスに感染してしまうのです。 感染予防にコンドームは有効ですが、太ももやお尻に症状が出る場合もあるため、コンドームで完全に防ぐことはできません。

また、口唇ヘルペスを発症している人とオーラルセックスをして、性器にウイルスが感染し、性器ヘルペスを発症することもあります。

症状がある人の「患部に触れる」

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ウイルスは非常に感染力が強いため、性行為をしなくても、患部に触れるだけで感染することがあります。

特に、太ももやお尻などの皮膚に傷があるときは要注意。 皮膚が健康であれば、皮膚のバリア機能が働きウイルス感染を防げるのですが、 皮膚に傷や湿疹があるとバリア機能が働かずに、簡単にウイルスの侵入を許してしまうことがあります。

症状がある人と「タオルを共有する」

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患部を拭いたタオルには、ウイルスが付着している場合があります。 そのため、タオルをそのまま使うと、タオルを介してウイルスに感染してしまうことがあります。

自分の口唇ヘルペスを触った手で「自分の性器に触れる」

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ウイルスは、体の別の部位に感染することもあります。 例えば、自身が口唇ヘルペスを発症しているときに、患部(口唇)に触れた手でそのまま性器に触れると、性器にウイルスが感染してしまうことがあります。

このように、性器ヘルペスは感染力が強いため、性行為をはじめとしたさまざまなきっかけで感染してしまうのです。

3.性器ヘルペスの症状

続いて、性器ヘルペスを発症すると、どのような症状があらわれるのか見ていきましょう。 性器ヘルペスの症状は、大きく「初感染」か「再発」で異なります。

初感染時の症状

初感染時には、症状が強く出る傾向にあります。

ウイルスに感染して2~10日後に、性器やその周辺、お尻、肛門周囲などに水ぶれや発疹が多数あらわれます。 また、強い痛みが出たり、38℃以上の発熱、だるさ、頭痛、リンパ節の腫れなどを伴うこともあります。

特に女性の初感染時には、痛みが強すぎて、排尿や歩行が困難になることもあります。

再発時の症状

単純ヘルペスウイルスに一度感染すると、ウイルスは死滅せずに体内に潜伏し続けます。 そして、疲れやストレスなどで免疫力が低下すると、ウイルスが再活性化して症状が「再発」します。

再発時には、初感染時に比べて症状が軽くなる傾向があります。

性器やお尻に小さな赤い発疹が出たり、水ぶくれや潰瘍が1~数個だけできる場合が多いようです。 初感染時のように全身症状を伴うことは少なく、穏やかに症状があらわれて回復していきます。 治癒までの期間も、初感染時より短くなります。

また、再発する前に、性器に違和感を覚えたり、太ももや下肢の痛みなどを感じたりすることもあります。

以上が、初感染時と再発時の症状の違いです。

初感染時に症状が強く出てしまうのは、体が単純ヘルペスウイルスに対する免疫を持っていないからです。 一方、再発時には体が免疫を持っているため、症状は軽くなるというわけです。

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初感染時でも軽いケースがある

ただし、初感染時でも症状が出なかったり、わずかな発疹や違和感程度で自然に治ってしまうケースもあります。 そのため、「初感染時は症状が強く出る」と言い切ることはできません。

4.性器ヘルペスの検査

性器ヘルペスの不安がある場合は、検査を受けるようにしてください。

検査は皮膚科や婦人科で受ける

性器ヘルペスの検査を受けるには、「皮膚科」や「婦人科」を受診します。 まずは、性器ヘルペスを発症しているかどうかを診断するために、問診、視診、検査を行います。

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問診について

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問診では、医師から次のような質問をされます。

  • 水ぶくれや発疹がいつごろできたのか
  • 症状はどのように広がったのか
  • 痛みやかゆみはあるか
  • ウイルス感染の心当たりはあるか

視診について

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問診に続いて、視診を行います。 視診では、医師が水ぶくれや発疹の形状や大きさなどを直接見て、単純ヘルペスウイルスによるものかどうかを確認します。 再発の場合なら、問診と視診だけで診断できる場合もあります。

検査について

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性器ヘルペスかどうかを診断するために、最終的には下記のような検査を行います。

顕微鏡検査

患部の一部を切り取って、細胞の中にウイルス感染による異常な細胞がいないかどうかを顕微鏡で確認します。

血液検査(抗体検査)

血液を採取し成分を調べて、ウイルスに感染しているかどうかを確認します。

5.性器ヘルペスの治療

検査の結果、性器ヘルペスを発症していると判明したら治療を始めます。

治療には抗ウイルス薬を使用

性器ヘルペスの治療には、「抗ウイルス薬」を使用します。 性器ヘルペスは自然治癒もしますが(初感染時で2~3週間、再発時で1週間以内)、抗ウイルス薬を使うことで、治療期間が明らかに短くなることが分かっています。

症状を悪化させたり、相手にうつさないためにも、医師による適切な治療を受けることをおすすめします。

初感染時には内服薬を使う

抗ウイルス薬には、内服薬や外用薬(軟膏)があり、症状が軽ければ外用薬で治療できる場合も多くあります。

ただし、外用薬では体内で増殖しているウイルスを抑えることはできません。

ウイルスの増殖を根本的に抑えるには、内服薬が効果的です。 そのため、症状が強く出やすい初感染時には、内服薬を使うケースが一般的です。

性器ヘルペスの治療で使われる、主な抗ウイルス薬は下記の通りです。

アシクロビル(商品名 ゾラビックス)

ヘルペスウイルスのDNAに作用して、複製するのを阻止する抗ウイルス薬。内服薬の場合、体内への吸収率が低いため、1日5回服用する必要があります。

塩酸バラシクロビル(商品名 バルトレックス)

アシクロビル系の抗ウイルス薬。アシクロビルよりも吸収率が高いため、服用回数は1日2~3回で済みます。

ビタラビン(商品名 アラセナA)

外用剤タイプの抗ヘルペスウイルス薬。早期の使用ほど効果が高くなるため、発症から5日以内に使い始めることが良いとされています。

再発時の方が治療期間は短い

抗ウイルス薬は、5~10日間程度服用します。症状が軽い再発時の方が、治療期間は短くなります。

また、極めて重症の方や、エイズなど免疫不全の方の場合には、入院して点滴による抗ウイルス薬の投与で治療を行います。

以上が、一般的な性器ヘルペスの治療法です。 下記に補足として、「性器ヘルペスの市販薬」「個人輸入のお薬」などについて簡単に追記します。

性器ヘルペスの市販薬はない

上であげた抗ウイルス薬は、ドラッグストアで購入することはできません。 病院を受診して、医師に処方してもらう必要があります。

「病院に行くのが恥ずかしい」と考える人もいるかもしれませんが、性器ヘルペスは決して珍しい病気ではありません。 皮膚科や婦人科で治療を受けるのは、ごく当たり前のことです。恥ずかしがって、適切な治療を受けない方が問題です。

口唇ヘルペスの市販薬で治療をしない

性器ヘルペスの市販薬はありませんが、口唇ヘルペスには市販薬があります(再発の場合のみ)。

「性器ヘルペスでも、口唇ヘルペスの市販薬で治るのでは?」と考える人がいるかもしれません。 実際、性器ヘルペスと口唇ヘルペスの治療薬の成分は似ています。

しかし、口唇ヘルペスの市販薬で性器ヘルペスを治療するのは危険な行為です。

性器にできている水ぶくれが、性器ヘルペスではない可能性があります。 また、性器ヘルペスだったとしても、ほかにも別の性感染症に感染している可能性があります。

症状を悪化させるリスクがあるため、口唇ヘルペスの市販薬で性器ヘルペスを治療するのはやめましょう。

個人輸入のお薬にもリスクがある

ご存じの方もいるかもしれませんが、抗ウイルス薬はインターネットなどで、個人輸入代行業者から購入することができます。 しかし、こういったルートでのお薬の購入はおすすめできません。

先ほども書いたように、実は性器ヘルペスではなかったり、ほかの性感染症に感染している場合もあります。 また、お薬自体の副作用や品質の面でも心配です。

厚生労働省のHPでも「医薬品等の個人輸入は健康被害などの危険性があります」と警告し、 次のような理由をあげています。

  • 不衛生な場所や方法で製造されたものかもしれません。
  • 虚偽又は誇大な効能・効果、安全性などを標ぼうして販売等されている場合があります。
  • 正規のメーカー品を偽った、偽造製品かもしれません。

医薬品等を海外から購入しようとされる方へ|厚生労働省

自己判断による間違った治療法には、症状を悪化したり、かえって治療期間を長引かせてしまったりと、デメリットしかありません。 疑わしい症状がある場合は、すぐに皮膚科や婦人科を受診するようにしてください。

6.治療期間中の注意点

性器ヘルペスの治療期間中には、下記のような点に注意する必要があります。

患部を清潔にする

性器ヘルペスを発症している間は、患部を清潔に保つことが大切です。 清潔といっても、洗浄力の強い石けんで洗うのは逆効果です。 皮膚のバリア機能を壊さないように、低刺激の石けんでやさしく洗うようにしてください。

性行為を控える

ウイルスは非常に感染力が強いため、症状があるときの性行為は絶対に控えてください。 コンドームを付けても完全に防げないため、性行為は医師に治療終了を告げられてから行うようにしてください。

自己判断でお薬をやめない

抗ウイルス薬を使用していると、徐々に症状が改善していきます。 ただし、症状が良くなったからといって自己判断でお薬をやめてはいけません。 中途半端に治療を中止すると、ウイルスが再活性化して症状が再発する恐れがあります。

自己判断で他のお薬を使わない

インターネットの情報などを鵜呑みにして、医師が処方したお薬以外を使用するのは絶対にやめてください。 かえって症状を悪化させてしまう恐れがあります。

お酒を控える

アルコールには血管を拡張させる働きがあり、炎症反応を激しくしてしまう恐れがあります。 ヘルペスの症状を悪化させる可能性もあるため、治療中はアルコールを控えるようにしてください。

7.性器ヘルペスの再発リスク

上でも書きましたが、性器ヘルペスの原因となる単純ヘルペスウイルスは、一度感染すると完全に死滅させることはできないため、何度も再発を繰り返すことがあります。 特に、主に下半身に症状があらわれる単純ヘルペスウイルス2型は、1型よりも再発頻度が3倍以上高いことが分かっています。

女性の1年間当たりの平均再発回数は、単純ヘルペスウイルス1型が2.1回、単純ヘルペスウイルス2型が7.2回です。 つまり、単純ヘルペスウイルス2型は、2カ月に1回以上再発していることになります。

再発は初感染時に比べて症状は軽くなりますが、下記のようなリスクもあるため油断はできません。

ほかの性感染症にかかりやすくなる

性器ヘルペスも性感染症のひとつですが、性器ヘルペスを発症したり再発を繰り返していると、患部の皮膚がただれたり、傷が付いたりしてしまいます。 すると、皮膚のバリア機能が壊されて、クラミジアや梅毒、HIVなどの病原体が侵入しやすくなってしまうのです。

さまざまな性感染症への感染リスクが高まり、症状も強く出てしまうこともあります。性行為の相手が複数いる場合は、特に注意が必要です。

パートナーにうつしてしまう

たとえ症状が軽くても、患部にはウイルスが増殖しています。 ウイルスは感染力が強いため、性行為などを通して簡単に相手にうつしてしまいます。 「ウイルスを広めない」という意味でも、再発予防を心がけることは大切です。

妊婦さんは胎児に影響を与えることがある

ウイルスが体内に潜伏している状態なら、胎児に影響はありません。 ただし、出産時に性器ヘルペスを発症していると、産道感染することがあります。

胎児がウイルスに感染すると、脳障害を起こしたり死に至るケースも考えられます。 そのため、妊婦さんが出産直前にウイルスに感染したり、再発した場合には、帝王切開などの処置を取ります。

妊婦さんの性器ヘルペスの影響については、こちらの記事で詳しく解説しています。

このようなリスクがあるため、性器ヘルペスの再発を予防することは非常に大切です。

8.性器ヘルペスの再発予防法

性器ヘルペスは、免疫力の低下によって引き起こされることがあるため、 「疲れやストレスを溜めない」「食生活を改善する」「睡眠時間を確保する」といった基本的な健康習慣が有効です。

ただし、それでも頻繁に再発を繰り返してしまう場合は、抗ウイルス薬を飲み続ける予防法もあります。

抗ウイルス薬を飲み続ける予防法

毎日低用量の抗ウイルス薬を飲み続けることで、ウイルスの再活性化を抑えこみ、性器ヘルペスの再発を防ぐ方法です。 抗ウイルス薬を毎日飲むことになりますが、長期的に服用しても安全なことは確認されています。

再発の予防効果も、60~70%の患者さんで認められています。再発に悩まされている方は、医師に相談することをおすすめします。

9.最後に

性器ヘルペスを発症すると、水ぶくれや発疹などの症状があらわれます。 早期の治療で回復が早くなるため、 気になる症状がある場合には、すぐに皮膚科や婦人科を受診するようにしてください。

また、性器ヘルペスは再発しやすい特徴があります。 治療後は、再発予防を心がけるようにしてください。

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